2008年04月09日
TED LENNON NEW ALBUM "THE CALM" Liner Notes

TED LENNON "THE CALM" (Buffalo LBCY 430)
Ted Lennonの新しいアルバムのライナーを書かせてもらいました.
今週のLAZY FRIENDです。
Here it is.
カリフォルニアには、ロスから北に向かうベンチュラ・ハイウエイが走っている。この道を歌にしたアメリカというバンドの大ヒット曲「ヴェンチュラ・ハイウエイ」は僕達に、日の長い、さわやかなカリフォルニアのイメージを植え付けた。“ベンチュラハイウエイ イン ザ サンシャイン”というフレーズで、僕達は勝手に、頭のなかでカリフォルニア イコール、暖かで陽気な西海岸というイメージをつくりあげてしまったんだ。
でも実際は、海沿いのハイウエイをちょっと横道にそれると、自然な海岸やサーフポイントがたくさんあり、寂しい海岸もある。テッド・レノンはそんな海岸でサーフィンをしながら育った。ベンチュラの海岸線は夏はいつも霧がかかっている。イメージ的には青空で、一般に出回っている写真もさわやかなものばかりだが、地元の人はベンチュラに住むなら霧が好きじゃないと暮らしていけないと話すほどだ。霧は寒さを運んでくるものだから、カリフォルニアのイメージとはかけ離れてる。とはいえ、海岸は今でもひとりで波にのれるポイントがたくさんある。とても自由な感じだ。パドルして出て行けば、イルカが波のなかをサーフィンしていたり、波のぎりぎり上をボディーサーフィンするペンギンが見えたり、ペリカンが波の前に起こる風を使ってサーフィンしている姿を目の前で見ることもある。1羽じゃない、5羽ぐらいそろって波にのっていることなんてザラだ。現実とは思えないほど素敵なシーンに巡り合う。時には水中に一目散に入ったかと思えば、小さな魚を加えて出てくる。でも、水はいつも冷たい。朝も寒い。一年中、ウエットスーツを来てサーフィンをする世界だ。そのうえに、彼が育った町はオーハイ・マウンテンズという山にあるフォスター・パークだ。彼は小さい頃、その山のなかやその奥にあるオーハイという町で遊んでいたという。ベンチュラという賑やかな町からは14キロぐらいしか離れていないのに、まった違う世界だ。オーハイは小さい西部の町で、建築はスパニッシュ・リバイバルというスタイル。山の芝生は夏になると金色になり、その合間に大きな緑の木がポツンポツンとそびえている。シャングリラという平和な町を舞台にした『ロスト・ホライズン』という映画が撮影されたほど美しい場所だ。彼はそんなところで育ったんだ。大自然が広がるフォスター・パークの山と、ベンチュラ・カウンティのビーチが、彼のバック・ボーンといえるだろう。
ところで、彼の家族には祖父や父親などミュージシャンが多い。そんな環境で育ったテッドは早いうちから音楽に親しみ、若いときはよくカントリーを聞いていたという。アメリカのちょっと田舎に行くと、カントリーが盛んだから納得だ。
西海岸では今、アコースティック・ミュージックのルネッサンスがある。ジャック・ジョンソンはハワイの人だけど、大学は西海岸だから、その音楽シーンの一人に入っていた。ジャック・ジョンソンが売れたことで、彼みたいなアコースティック・ギターのミュージシャンが続々と出てきたけれど、そもそもはジャック自身も西海岸の音楽シーンの一員だった。テッド・レノンもジャックとライブをしていたんだ。カリフォルニアは少し北に行くとサンタバーバラという町があるが、彼らはそこの大学のカフェでライブをやっていた。この音楽シーンはそんな背景で生まれていった。カフェでは音楽を聴くこともできれば、話すこともできる。アコースティック・ギターだからBGMにもなるんだ。だからこの音楽はアルコールでなく、コーヒーが似合う。カプチーノを飲んでクロワッサンを食べながら聴く音楽なんだ。決してライブハウスじゃない。新しい音楽ではないけど、ジャック・ジョンソンのおかげでまたこういう音楽が広まったんだと思う。
そんなジャック・ジョンソンやテッド・レノンを表す言葉のひとつに、サーフロックというジャンルがあるが、時代によってそのサーフロックは変わっている。60年代はビーチボーイズがサーフロックだった。70年代はハワイのカラパナやセシリオ&カポノだったり、80年代にはパンクがサーフロックと呼ばれた場所もある。今はアコースティックの音楽をサーファーがやってると、サーフロックと呼ばれたりする。でもみんなスタイルが違うから、ひとつのジャンルにくくるのは失礼なんじゃないかと思う。今のサーフロックはロスやハワイのビーチを思わせる明るくてアップテンポなイメージだけど、テッド・レノンの今回のアルバムはもう少し暗い感じだ。ちょっとSAD&LONELYなんだ。アメリカのカントリーミュージックでいう、HIGH LONESOMEだ。このアルバムを聴くと、そんな言葉を思い出す。マリブやベニスビーチ、サンタモニカやワイキキじゃない、独特な世界だ。
テッドの日本デビューは2006年の『ウォーター&ボーンズ』。このアルバムはアメリカではインディーズで出していたアルバムやEPをミックスして出したものだ。これはシンプルなアコースティックで、ほとんどひとりで弾いている。次の年には『テイスト・オブ・タイム』をリリースした。これはベースとドラムを足して、もっとダイナミックなサウンドに仕上げている。日本ではこのアルバムに入っている「ノー・モア・ウェイスティング・タイム」がヒットした。そして今回の『ザ・カーム』は、一作目のシンプルなパフォーマンスに戻っている。ジャケットを見ればわかるけど、クールなムードだ。自分のリビングに座って彼が親密な感じで話しをしている風だ。昔のフォークのレコードに近いかな。93年にボブ・ディランが『奇妙な世界に』というアルバムを出したけど、そんな感じだ。シンプルなフォーク・ミュージックに戻ったんだ。テッド・レノンは前作のアルバムでも今回のアルバムでも、ボブ.ディランの曲を一曲カバーしている。ボブ・ディランが影響されたランブリング・ジャックエリオットのスタイルで、ボブ・ディランを歌っているんだ。
こんなふうに、前は青空の下で聴くアルバムだったけど、今回は涼しいカリフォルニアの海のそばや、夜に飲むワインが似合う仕上がりになっている。
投稿者 George : 00:00 | コメント (0) | トラックバック (0)
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